日本からちょうど反対側に位置するブラジル。地理的に最も遠い国の一つで、縁があるとは程遠いかと思いきや、実は日本と関係の深い国なのです。
今からおよそ100年前、移民として多くの日本人がブラジルへと渡り、ブラジルは世界一日系人が多い国になりました。特に大都市のサンパウロは日系人が多い事で知られており、「鳥居」が立っている地区もある程。20世紀末には、反対に多くの日系ブラジル人が出稼ぎの目的で日本に訪れ、日本にも多くのブラジル人が暮らしています。
そんな人的な交流によって関係を築いてきた日本とブラジル。ブラジルといえば、サッカーやサンバという声が聞こえてきそうな気がしますが、実はあまり知らないという方も多いのでは?
ブラジルの国旗、土地・気候、人口などの最新基本情報をお届けします!
目次
ブラジル連邦共和国の国旗
ブラジルの正式名は「ブラジル連邦共和国」。
国旗は、共和制が樹立した1889年に誕生しました。国旗中央の球体の星空ですが、これは共和制が樹立した1889年11月15日のリオデジャネイロから見た空を示しています。また、描かれている星の数は27個あり、ブラジルにある26州と1連邦区を表しています。
国旗の色にも意味があります。緑は内陸部の豊かな大森林、菱形の黄色は鉱物資源を象徴しており、中央の円形の天空と星は、大航海を連想させる天球儀を表します。
国旗から、ブラジルは自然豊かで資源大国な事がわかるね!
天球儀の中には文字が書かれています。共和制が樹立した頃のブラジル政府はフランス社会学者オーギュス・コントの「実証主義」に影響を受けており、その「実証主義」のモットーである「秩序と進歩(Ordem e Progresso)」が国旗に書き込まれました。
文字が書かれている国旗って珍しい〜!
( ブラジル国旗が誕生した時代に興味がある方はコチラの記事をチェック→3分で分かる!第一共和政時代のまとめ )
土地と気候 |熱帯雨林と高原地帯の広がるブラジル
南アメリカ大陸の北東部に位置し、大陸のおよそ半分を占めているブラジル。面積は日本のおよそ23倍で、世界第5位という広大な土地があります。
国の北半分は熱帯雨林のアマゾンが広がり、世界一ジャングルに覆われた地域です。その中を流れるアマゾン川の流域面積は世界最大を誇ります。長さについては、アフリカ北東部を流れるナイル川が世界1長いとされ、世界第2位の長さと言われてきましたが、2007年にペルー奥地のミスミ山でアマゾン川の新たな源流が発見され、アマゾン川の方が長いのではという論争も起こっている。(情報元:BBCニュースより)
また、ブラジルのアマパー州の州都マカパは赤道が通っている為、赤道に近い北部は一年中気温が高く降水量も多いです。南半分はブラジル高原が広がっており、多くの低い山や谷が入り組んでいます。
Climas do Brasil #clima pic.twitter.com/iEpFyUjZCO
— Brasilemmapas | 🇧🇷🇵🇹🇬🇧 (@brasilemmapas) December 17, 2020
上記、Twitterで見つけたブラジル気候の色分けマップです。
赤道に近い方の北部青色が熱帯雨林地域、水色が熱帯モンスーン地域(熱帯雨林の気候に弱い乾季がある)で、1年中暑く降水量が多い為、湿度が高い。赤は半乾燥地域で、ブラジル高原の北東部。サボテンやアガベなどトゲのある低木が生えている地域です。オレンジは熱帯気候で高原の中央(内陸部)は年間降水量が少なく、雨季(10月〜3月)と乾季(4月〜9月)がはっきりとした「カンポ・セラード」と言われる低木がまばらに生えた草原が広がっています。黄色の沿岸部は熱帯気候だが、海の影響をうける地域です。赤道に向かって吹く風(貿易風)が一年中吹き、暖かい海を通過するので湿っています。黄色内陸部は温帯夏雨気候で夏は降水量が多いが、冬は乾燥します。最後にブラジル南部の緑は亜熱帯地域となります。亜熱帯地域でも南部では高原のある地域が多く、標高がある地域では気温が下がり、雪が降ることも珍しくありません。
ブラジルの夏は12月〜2月、冬は6〜8月です。ブラジルは日本と逆で北に行く程暑く、南へ行く程涼しくなります。一年中蒸し暑い北部に比べて、内陸部の夜や南部の冬はかなり冷える事もあり、雨が続くと急に気温が下がり肌寒く感じる事もしばしばあります。なので、脱ぎ着きしやすいジャケットなど厚手の洋服は必須です。
ブラジルの首都は内陸部にあるブラジリア
首都はブラジリアです。ブラジル高原の内陸部の地域にあります。そのため、熱帯気候で夏は雨が多く、冬は乾燥している。ブラジリアは車社会を想定した人工の未来都市で、羽を広げた飛行機の形にデザインされています。世界でも有名なブラジル人建築デザイナー「オスカー・ニー・マイヤー」が設計した、国会議事堂はブラジリアのシンボルとも言える。
1956年に大統領に就任したクビシェッキが、海岸部にあった首都を内陸部に移転させる計画をスタートさせました。そして、1960年4月にブラジリアは完成し、首都はリオデジャネイロからブラジリアへ移されました。
ちなみに、リオデジャネイロの前がバイーア州サルヴァドールでブラジル最初の首都だよ。
人口 | サンパウロがブラジルで一番大きな都市
総人口は約2億人で日本の約2倍の人達が暮らしています。2020年のデータからランキング付けした世界人口ランキングで第6位です。ブラジルで最も人が集まっている地域は大都市であるサンパウロで、南半球で最大の都市。世界で12番目に大きな都市と言われています。
IBGEの2022年4月の人口数のデータでは、人口が多い州トップ5(サンパウロ、ミナスジェライス、リオデジャネイロ、バイーア、パラナ)を合わせると、ブラジル総人口の50%以上になり、人口の半分以上が南東部や海岸部に集まっているのが分かります。アマゾンのジャングル地域や、西側の内陸部は土地は広いですが、人はあまり多くないようです。
南東部に人が多いのね!赤道から離れて海も近くて気候的に涼しくて住みやすいのかしら。
ブラジルは若者が多く、国民のおよそ90%は、64歳未満です。若者が多いなんて素晴らしいですよね! しかしながら、年々65歳以上の高齢者が増加傾向にあり、人口増加率は減少傾向にあります。(情報元:IBGE,2022年)
また、ブラジルのジャングルには私達の現代文明と接触をしていないとされる「未接触部族」が、数多く確認されています。それが数十部族いるようなので、ブラジルの土地に実際に住んでいる人の数はもう少し多いのかもしれません。
様々な文化が共存する国
ブラジルには元々、先住民が暮らしていましたが、1500年にポルトガル人によって発見されてから植民地にされ、言語はポルトガル語が公用語となりました。労働力としてアフリカの人達が連れてこられ、19世紀末に入ると労働力を移民に頼るようになり、ヨーロッパの人々が次々にブラジルに渡りました。1908年には、日本人の移民も受け入れを開始しました。こうして、ブラジルは様々な人種が共存する国となりました。
( 歴史に興味ある方はコチラの記事がおすすめ→ 3分でわかる!ブラジル発見から帝政崩壊までのまとめ )
ブラジルでは国勢調査によって、主に肌の色で国民を分類しています。歴史的に長い年月をかけ色々な人種が混ざり合っている為、分類するのが難しく、もはや分類しなくてもいいような感じもしますが、「ブラジル地理統計院IBGE,2010」によると、国民の人種構成は、白人系47.7%、ムラートと呼ばれる混血系43.1%、黒人系7.6%、アジア系1.1%、先住民0.4%で、調査の仕方は個人による申告なようなので、この数字の正確性は疑問ではありますが、この数字を見る限りではヨーロッパ系の白人とムラートと呼ばれる白人と黒人の混血系が圧倒的に多いのがわかります。また、面白いことに、居住エリアよって人種傾向があり、白人系は南部、黒人系は北東部、アジア形は南東部、先住民系は北部に多いようです。
宗教はキリスト教が90%!
人口の約90%はキリスト教です。キリスト教にも教派が色々ありますが、カトリックが約65%、プロテスタントが約22%です。その他、数は少ないが、アフリカから伝わった宗教(カンドンブレー)を信仰している人達や、魂や転生を信じるスピリティズムと呼ばれる人達、仏教、無宗派もいます。
政治は連邦共和制
政治は連邦共和制で26の州とブラジリア連邦直轄区からなります。国王など君主を持たず、直接選挙で国民に選ばれた大統領が統治し、任期は4年で、一度のみ再任可能です。現在(2022年)の大統領はジャイール・ボルソナロで、コロナを”ただの風邪”と軽視した事が話題になりましたね。次の大統領選挙は2022年10月ですが、2003年から8年間大統領を務めたルイス・イナシオ・ルーラが大統領へ再度立候補すると言われており、支持者から期待が高まっています。
( ルーラ 政権期の記事はコチラ → 3分でわかる!危機的インフレから脱出し21世紀へ)
追記:2022年10月30日のブラジル大統領決戦投票で、元大統領ルイス・イナシオ・ルーラが現職であったボルソナロを僅差で破り、当選しました。2023年からはルーラが再びブラジルの大統領として就任します。左派のルーラは、自身も貧困層出身であり、ブラジル北東部の貧困層からの支持が厚い。「飢餓撲滅」や「人種差別解消」「アマゾンの環境保護」などを公約に掲げており、今後の活動が期待されます。
ブラジル産業
広い土地に温かい気候に恵まれているブラジルは「農業大国」とも呼ばれています。有名なのはコーヒーですが、その生産量は世界一を誇ります。また、砂糖、オレンジ、大豆などの生産量も世界トップクラスで各国に輸出されています。ブラジルといえば、お肉をたくさん食べているイメージがありますが、牛肉や鶏肉も、生産量・輸出量ともに世界に負けを取りません。
また、品質にも力を入れています。生産される食肉はブラジルの農業畜産供給省(MAPA)が定める「残留物・汚染規則計画」に従い、食肉中の残留物や、薬剤に関する厳しい基準をクリアしなければならず、厳しい規定を設けているようです。
しかし、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、2017年に大手食肉加工業者らがブラジル政府や検査官らに賄賂を渡し、衛星基準に満たない肉を販売したなどで、一時ニュースで報道され問題になった事がありました。
残念ながら、こういった政府や企業の汚職スキャンダルが、まだ多い所もブラジルと言えるのかもしれません。
農産物の他に、鉱物資源が豊富な事で知られるブラジル。鉄の材料になる鉄鉱石、アルミニウムを作る原料のボーキサイト、原油などを原料として、日本を初め世界各国で輸出するほか、飛行機や自動車部品に加工して輸出しています。自動車産業は特に活発で日本の会社で言えば、トヨタや日産など、様々な国の自動車メーカーの工場があります。
現在では、アマゾンで金の採掘がされています。しかし、金を精錬するときに使われる水銀が川に放流され、環境汚染が問題になっています。アマゾンに住む先住民達は、汚染された川の魚をとって食べる為、重大な健康被害に悩まされています。
教育 | 朝が早い子供達
6歳から14歳の9年間が義務教育で日本の小学校と中学校にあたります。その後に日本の高校にあたる3年間の中等教育があり、公立の学校なら義務教育は無料です。私立には、カトリック系のミッションスクールなどがあり、保育園から高等部まで同じ校舎を使用するなど様々な形態がある模様。ブラジルの義務教育は、公立と私立でかなりの教育の差(学力の差)があるそうで、中流以上の家庭は私立にいれる人が多いそうです。大学は4年制と6年制があります。
驚いたのが、時間割。午前と午後の2部に分かれており、子供達の多くは午前中で授業が終わります。(または午後のみなど)午前中で終わるなんて、あまり勉強できないじゃないか!?と思いきや、朝が6時代に登校するとかで、1日のスタートが日本よりも早いようです。 日本の新年度は4月ですが、ブラジルは2月下旬です。11月下旬に学期末テストがあり、終われば新学期まで夏休みになります。
ブラジルといえばスポーツ!
サッカー
サッカーが有名ですね!世界一を決めるFIFAワールドカップでは、ブラジルが5回優勝しており世界最多。常連の優勝候補となっています。準優勝も2回あります。
ブラジルでは、サッカーは国技。ブラジル国内の至る所で、サッカーをしている子供達を見る事ができます。ブラジルでは、貧富の差が問題となっていますが、サッカーで技術を磨きプロとして活躍すれば、貧困から抜け出せる事も夢ではありません。子供たちは熱心にサッカーの練習に励んでいます。
バレーボール
バレーボールも強いことで知られています。優勝候補にいつもあげられます。最新2021年の世界ランキングでは、男子1位、女子3位です。国民的にも愛され人気のスポーツです。
サーフィン
サーフィンといえば、アメリカ、オーストラリアとか思ってましたが、実はブラジルも世界的に有名なんですね。
2021年に行われた東京オリンピック、新たに競技に加わったサーフィンでブラジルのイタロ・フェレイラ選手が優勝しました。ボードが折れてしまったハプニングが印象的でしたね。ブラジルはサーフィンも世界的に強くWSL(ワールドサーフリーグ)の世界ランキングを見ても、ブラジル人は高い頻度でトップ3には入っています。ブラジルのビーチはプロサーファーにも人気のエリアが多数あり、思う存分に練習ができるなど波に恵まれているんだとか。大自然が素晴らしい選手を生み出しているんですね!
その他、ヨット、柔道 / 柔術、水泳なども世界的に高いレベルを誇っています。
ブラジルのGDP
ブラジルのGDPはIMF統計(2021年)によると、
- 名目GDPは1兆6080億8000万米ドル(世界ランク13位)
- 国の豊さを表すとされる一人当たりのGDPは7,564米ドル(世界ランク87位)
- 実質GDP成長率 4.6%(世界ランク94位)
ブラジルは昨年パンデミック によるマイナス成長率でしたが、2010年以来の増加で回復を見せる事ができました!
まとめ
ブラジルは日本から遠い国でありながら移民によって日系人が多く暮らし、日本の文化も根付いている国ですが、私たちの住む日本と比べると、その国土、人口、人種、気象など全く異なる事が多いとわかりました!
日本は夜でも一人で街を歩ける安全な国ですが、2022年いまだに村社会、民族社会的な考えが強く、他者を受け入れづらいような社会のイメージが残っている気がします。
世界中から文化や言語を受け入れて、それが合わさってブラジルという国が産まれている、ある意味、寛容的な社会で魅力的です。