ブラジル料理の代表といえば、豪快な肉を焼いた「シュラスコ」を連想する人も多いと思います。シュラスコに続いて、有名なブラジル代表料理があります。たっぷりの豆と豪快な肉をじっくり煮込んだ「フェイジョアーダ」という料理です。
初めて見た人は特に日本人ならばお汁粉を連想するような見かけに驚くかもしれない。しかし、見かけに騙されず、是非一度食べて欲しい!!
目次
フェイジョアーダは奴隷食!? それとも・・・
フェジョアーダは一般的に、「奴隷が作り出した」という説が広く伝わっていますが、現在では「リオデジャネイロ」から発祥したとも言われています。
今から500年以上前、ブラジルはポルトガルの植民地でした。多くのアフリカの人々が奴隷としてブラジルに連れて来られた歴史があります。ブラジルは砂糖が主力産業で、奴隷達は過酷な労働を強いられていたわけですが、農園主が食べない肉の部位であった豚の耳、皮、足、尻尾などを奴隷達が豆と一緒に煮込んで食べていたのが「フェイジョアーダ」の始まりと言われてきました。私の夫もブラジル人ですが、「奴隷が食べていた料理」と幼い頃から聞いていたそうです。
多くの人がまだ「奴隷食だった」と信じる一方で、別の説が存在します。ヨーロッパでは昔から豆と肉を使ったフェイジョアーダ と似たような煮込み料理が多く存在していました。この事実から、「ブラジルを植民地としていたヨーロッパの人々が持ち込んだのでは?」という説が持ち上がりました。フェイジョアーダ は、ブラジルで調達しやすい食材を使ってできた「ヨーロッパ風煮込み料理」で、リオデジャネイロのホテルが提供したのが始まりとも言われています。
どちらの説にしても、フェイジョアーダの味は国民に愛され、ブラジル全土へ広まり、代表的なブラジル国民食となりました。
フェイジョアーダはブラジルの定食メニュー
フェイジョアーダは、豚の耳、皮、足などが煮込まれると前記しましたが、これらは脂質が多く、脂っこいのが特徴です。さらに豆を加えて、ボリュームのある料理なので、毎日と胃が疲れてしまうかも。
エネルギーの高い料理なので、疲れの出始める週の半ばの水曜日と、週末を元気に過ごす為に土曜日に食べる事が良いとされています。サンパウロやリオデジャネイロの地域であるブラジル南部・南東部では水・土曜日のレストランの定食メニューになっているんです。
一般家庭では週末に出される事が多いです。そして、必ずと言っていいほど、フェイジョアーダ と共に出される「付け合わせ」があります。
それは、通称油ご飯と言われるニンニクと炒めたご飯、(ファリーニャやファロッファと呼ばれる)キャッサバの粉、コウビの炒め物(葉野菜でケールの一種)、ヴィナグレッチというライムなどで味付けされたさっぱりしたサラダ、オレンジなどが一緒に出されます。
また近年では、健康志向の人も増え、 脂質が多い所を取り除いた「フェイジョアーダ・ライト」も人気です。
黒い豆の正体は栄養価の高い”黒インゲン豆”
「フェイジョアーダ」で主に使われる黒い豆の正体は「黒インゲン豆」です。日本では、黒豆と言うと、皮の黒い大豆をイメージする人が大半かと思いますが、ブラジルで黒豆というと、「黒インゲン豆」の事を指します。
あまりお目にかかりませんが、黒インゲン豆は南北アメリカ原産でラテンアメリカ料理によく使われる定番食材の一つです。
「黒インゲン豆」は、栄養価がとても高く、ベジタリアン料理によく使用されているなど、美容と健康に良い事がわかりました!!
黒インゲン豆の栄養素
タンパク質、食物繊維(可溶性と不溶性の両方)を豊富に含み、脂質はほとんど無いのが特徴。糖質を代謝するのに欠かせないとされるビタミンB1であるチアミンが豊富で、黒インゲン豆と白米を一緒に食べると、白米だけを食べるよりも血糖値が低くなる傾向がある事がわかっています。血液を作る葉酸、ミネラルである鉄・マグネシウムも豊富に含み、黒いその見た目には、若さを保つ為の抗酸化成分も含んでいる。
一方で、炭水化物も多く含む為、炭水化物を制限している人には向かない食材かもしれないが、血糖値の急上昇を引き起こさず、ゆっくり消化される為、満腹感が持続され間食防止が期待できる為、ダイエットにも向いている。
上記のような栄養素から効果としては、腸内環境改善、目の健康維持やアンチエイジング、心臓病やがんの予防、コレステロール抑制などが期待できる。
豚肉の栄養素
フェイジョアーダには豚肉が欠かせません。豚肉には血や筋肉を作るタンパク質のほか、疲労回復に良いビタミンB1が多く含まれます。また、フェイジョアーダはニンニクと一緒に炒めますが、ニンニクに含まれる栄養素のアリシンはビタミンB1の吸収を促進させる働きがあるので、更に疲労回復効果が期待できます。ブラジル人の習慣である「疲れの出始める週の真ん中、水曜日に食べる」というのもこのような効果が期待できるからなんですね。
美容と健康に良いフェイジョアーダを作ってみよう
フェイジョアーダは広大なブラジル全土で愛されている料理ですが、地域や家庭によってその作り方や使用する食材は様々です。本当に伝統的なフェイジョアーダだと、豚の耳、皮、足などが入っていますが、今回こちらのサイトで紹介するレシピは、そういった部位は入れません。もちろん、食べたい方はお好みで入れてください。
ブラジルの一般家庭でも、豚の耳や皮など入れずにベーコンや、牛肉、豚肉の塊などを使用して作る所は多いです。それでも結構ボリュームがあるのですが、脂質を抑えたフェイジョアーダ・ライトに近いかもしれません。
ブラジル本場の味を再現すべく、本場でよく使われているお肉なども紹介します。日本のスーパーで手に入るお肉で代用しても美味しく作れます。
黒インゲン豆はフェイジョアーダの主役ですので、通販などで用意してくださいね。
【動画で見る】ブラジルの味!美味しいフェイジョアーダのレシピ
【レシピ解説】フェイジョアーダのレシピ
材料(5~6人分)
- 黒インゲン豆・・・500g
- 牛肉の塩漬け(カルネ・セッカ)※・・・200g
- 豚肉の塊(部位はどこでもOK)・・・200g
- ベーコンの塊・・・50g
- ソーセージ※・・・2本
- 玉ねぎ・・・1/2個
- ニンニク・・・2かけ
- ベイリーフ(ローリエ代用可)・・・2枚
- クミン(クローブ代用可)・・・適量
- 塩・・・適量
- 圧力鍋(あれば時間短縮になる)
※カルネ・セッカはポルトガル語で乾燥肉という意味。一定期間、塩で乾燥させた牛肉。旨味が凝縮されていて、塩気があり美味しい。使うときは塩抜きが必要。
※ソーセージのおすすめはパイオソーセージ。パイオソーセージは豚肉から作られ、ニンニク、塩などで味付けされ、薫製されたちょっと固めのスモークソーセージです。唐辛子が入ったものなど、種類は様々で製造する会社によっても違いがあります。こちらは辛くないタイプで、愛知県に本社があるサントアマロ社のパイオソーセージです。ローリエや赤ワインが使用されていて、国産豚もも肉を100%使用しています。(通販ではあまりお目にかかりませんが・・・)
サントアマロ社以外にもパイオソーセージはあります。↓
上記紹介しているのが、栃木県に本社がある「ダ・ファゼンダ社」のパイオソーセージです。豚100%のサントアマロ社と異なり、豚肉と鶏肉を混ぜ、香辛料を使っています。
こちらのカラブレサも、ブラジルでは人気のあるソーセージです。イタリア南部カラブリア州の移民から伝わったとされ、その名前もイタリアから来ています。ニンニクや、唐辛子などの香辛料で味付けされ、辛味のあるソーセージとして、ピザのトッピング、BBQ、ビールのおつまみ、フェイジョアーダなどによく使われています。
ポルトガル、ブラジルの伝統的なソーセージだよ。
下準備
- 黒インゲン豆(乾燥)は、洗って水に一晩つけておく。(最低6時間)
- 塩漬け牛肉(カルネセッカ)の塩抜き : カルネセッカを水に浸し、1時間ごとに水を交換する作業を5回繰り返す。最後は水切りしておく(※カルネセッカを使用しない場合は代用のお肉に塩をすり込み、1時間以上置く)
作り方
- 玉ねぎとニンニクを微塵切りにする
- 圧力鍋(または普通の鍋)に油をしき、微塵切りしたニンニク半分を炒め、香りがたったら水につけておいた黒インゲン豆を水ごと入れて(水が足りなければ豆がひたひたにつかる程度まで足す)、下準備した塩抜きした牛肉、ベイリーフとクミン、塩小さじ1を加えて豆が柔らかくなるまで煮る。圧力鍋を使うと時間短縮できます。(※圧力鍋によって、加熱時間は異なるので調節してください。豆の柔らかさの目安は指で潰れるくらい)
- 豚肉、ベーコンは角切り、ソーセージは1cmの幅で輪切りにします
- 手順2の鍋とは別の鍋、またはフライパンを用意し、油をしき、手順2で余ったニンニク半分を炒めます。ニンニンの香りが出たら手順1の微塵切りした玉ねぎを加えて炒めます。
- 玉ねぎが飴色になったら、ベーコンを入れ炒め、油が出てきたら豚肉、ソーセージを加えて表面に焼き色がつくまで炒めます。
- 手順2の柔らかくなった黒インゲン豆と手順5の炒めた肉を合わせます。どちらの鍋に入れてもOK。
- 水は足りなければ足して、そのままコトコト煮てとろみがついたら、最後に味見をして、塩で好みの味に調整して完成!
フェイジョアーダ がより美味しくなる付け合わせを揃えよう
お米
ブラジルのお米は日本のお米と異なる種類で、長粒米(インディカ米)です。炊いても粘りが少なくパラパラとしていて、細長い。タイ料理など食べた事のある方は想像つくかもしれません。あのタイカレーなど、サラサラしたカレーによく合うアレです。
ブラジルでは、この長粒米に、ニンニクや塩と油で味付けをします。これがまた、フェイジョアーダと合うんです。日本でもスーパーや輸入店でよく見かけ、比較的簡単に手に入るお米だと思いますが、炊き方は日本のお米と異なるので少し注意が必要です。炊き方を失敗すると本当パッサパサで不味いです。
私が炊く時は、鍋に油とニンニク、炊く前の米を炒め合わせ、米が油に馴染んだら、米の量の2倍のお水を入れて沸騰したらガラスの蓋をして、水が米に吸収されるまで煮込みます。吸収されたら、蓋を開けてちょっと味見をします。中が少し生っぽいという所で火を消して、また蓋をして10分くらい蒸したら完成です。
日本のお米でもブラジル風に、ニンニクと塩、オリーブオイルなどで味付けして、チャーハンのようにパラパラとさせても、フェイジョアーダと合いますよ。油で炒めるのが面倒な場合は、炊いたご飯に塩とオリーブオイルを掛けて、混ぜ合わせるだけでも美味しいですよ。
ファリーニャとファロッファ
フェイジョアーダに必ずと言っていいほどセットでついてくる粉があります。それが、ファリーニャやファロッファです。
ファリーニャはブラジル料理ではよく付け合わせで出される、炒ったキャッサバの粉です。昔の先住民から伝わった食べ物です。キャッサバには有毒性のものがありますが、先住民達はその食べ方を知っていました。
ファリーニャは、その有毒のキャッサバから毒を取り除いて、デンプンを取り出したものです。日本で流行になったタピオカも、このキャッサバのデンプンから作られています。ファリーニャは購入して、そのまま袋から開けて料理に振りかけて食べることができます。
ファロッファはファリーニャから作ります。鍋やフライパンでバター、玉ねぎの微塵切り、塩などをファリーニャに混ぜて、黄金色になれば出来上がりです。とうもろこしの粉をブレンドすることもあります。フォロッファも、ファリーニャと同様にすぐ振りかけて食べられるのも販売されています。すぐ食べられるインスタントのファロッファでいくつか試しましたが、美味しかった物を下記リンクで紹介します。
ブラジルでは、バナナやアサイを使ったファロッファがあったり、卵が入ってたり、種類が豊富で、サイドディッシュとして欠かせない粉です。
ブラジル人はファリーニャやファロッファを料理に振り掛けて、その食感を楽しみます。サクサクとしていて美味しいので、お肉につけたり、フェイジョアーダと食べたりするのに、とっても相性がいいんです。
個人的な意見ですが、フェイジョアーダ にかけるなら、筆者はファリーニャが好きです。インスタントのファロッファは美味しいですが、少し味付けが濃い感じがするからです。味付けは濃い目が好みの方は、ファロッファをお勧めします。
コウビの炒め物
コウビはあまり日本で見ないかもしれません。ブラジルではよく食べれている代表的な野菜です。ケールの一種です。
とにかく大きい葉っぱで、日本でもブラジルスーパーで売られています。手に入らなければ、スーパーで手に入るケール、キャベツ、ほうれん草、小松菜などを代用として使用してみて見てください。この中では、ケール、小松菜の順でコウビの味に似ているような気がします。
炒め物の作り方は、5mm程度の細切りにして、微塵切りしたニンニクと炒めるだけ。味は塩で調節しましょう。葉野菜はみんなそうですが、炒める前はフライパンにたっぷりなんですが、炒めたらすごく量が少なくなります。
ニンニクと合わせて微塵切りした玉ねぎを入れても美味しいですよ。コウビは、青汁の材料になるくらいなので、ビタミンC、ビタミンK、鉄分など、ビタミンとミネラルが豊富です。コウビ炒めのレシピはこちらの記事で紹介してます。
ヴィナグレッチ
ブラジルでよく食べられる付け合わせサラダが、ヴィナグレッチです。玉ねぎ、ピーマン、トマト、の微塵切りにライムやレモン、お酢、塩、オリーブ油で味付けして作ります。唐辛子やタバスコを入れて辛くする事もできます。さっぱりして、お口直しになりますよ。きゅうりを入れても相性がいいです。
ヴィナグレッチの作り方はこちらの記事より確認できます。とっても簡単ですので、お試しあれ。
オレンジ
オレンジは日本でも簡単に手に入りますね。ビタミンCが豊富に含まれています。鉄分の吸収を良くするので、フェイジョアーダの主役食材である黒インゲン豆と一緒にとるといいです。
フェイジョアーダは冷凍保存できる
筆者の家では、フェイジョアーダ を作りすぎて結構余ってしまうんです。でも、余ってしまっても問題ありません。冷凍できます。冷凍と耐熱対応の保存袋にフェイジョアーダ を小分けにして、冷凍庫で保存。また食べたい時にあたためます。ドロドロで水分が無くなっている場合は、鍋に戻し水を足して、塩で味を調節すれば、美味しく食べられますよ。
まとめ:栄養バランスの良いフェイジョアーダ
白米やニンニク、お肉に豆、野菜にフルーツと、フェイジョアーダは付け合わせと一緒に食べる事で栄養バランスがとっても高くなり、さらに美味しさが増すという事がわかりました。
今回のフェイジョアーダのように、ブラジルでは、脂質の多いお肉料理が多く、コレステロールが増加しそうで健康の面で不安になりそうです。
しかし、ブラジル人が毎日のように食べる豆類には悪玉コレステロールの吸収を阻害する働きがあり、豆を日常的に使用するのは理にかなっているといえそうです。
せっかくブラジル料理を堪能するなら、一品料理だけではなく、その付け合わせも一緒に食べて下さいね!